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 戦後75年の節目の年だと言われています。

 沖縄の地上戦でたくさんの島民を巻き添えにし、広島と長崎で20万の人を殺した年から75回目の夏。

 節目とはなんでしょう。五年ごとに添えられることばにどんな意味があるのでしょうか。

 沖縄には変わらず米軍基地が集中しています。核兵器はなくなっていません。日本は核兵器をなくすための条約を批准すらしません。

 基地が見えない場所に住む人たちは、コロナウィルスに汚染された世界でマスク越しに密かに息をする生活を強いられながら身を守っていても、人間社会の対立を象徴する軍拡には関心を持てず恐怖も感じないらしい。

 いま戦争に近づいていることに目を逸らしてはいけない。

 戦争は最大の人権の否定だ。コロナウィルスと共生できる時は来るかもしないけれど、戦争と共生することはできない。

 ことし7月末「黒い雨」訴訟の原告が全面勝訴しました。おぞましい放射能の被害者であることを認められるのになぜ75年もかかるのか。節目というにはあまりにも重い長い年月です。

 改めて井伏鱒二の「黒い雨」を読み返してみたいと思います。併せて重松静馬の「重松日記」も読みたい。

  

   

   黒い雨  井伏鱒二 著  新潮社         

 

  重松日記 重松静馬 著  筑摩書房

 

 若い人や広くヒロシマのことを知ってもらおうと思うとき、漫画で表現された

この作品は大切だと思います。

 原子爆弾によって消されてしまった命 なくなってしまった暮らし だれかに

「死ねばいい」と思われていることを感じながら生きていること。

 作者はあとがきで「このオチのない物語は三十五頁で貴方の心に湧いたものに

よって、はじめて完結するものです」と言います。

 生きたい、という主人公の思いを受け止めたいと思います。

「この世界の片隅に」で有名になりましたが、こうの史代の代表作です。

 

 夕凪の街  桜の国  こうの史代  双葉社