新型コロナウイルスの猛威が世界を覆っています。人は自粛という見えない鎖で我が身を縛り、見えない敵の侵入から守っているかの様です。
憲法が保障しているはずの健康で文化的な生活は「緊急事態」を前にもろくも瓦解し、フリーランスや私たち零細事業主は経済活動の停止で窮地に立たされています。
岡山県では岡山シンフォニービルでおよそ25年間開かれてきた古本まつり。当店も念願のまつりデヴューしたのは3月のこと。すでに不要不急の外出や三密を規制された中でしたから、岡山市表町商店街の人通りはとても少なく、いつもの賑わいはないと古参の古書店さんもため息でした。
でも、4月下旬開催予定の「古本掘り出し市」はとうとう中止になってしまいました。会場に運ぶばかりになっていた本たちが展示会用の木箱の中で恨めしそうに私をみております。
こんな時、ネットでご注文をしてくださる方には感謝です。
本は、暗い穴の中で出口も分からずもがいているかの様な鬱屈した気持ちを慰めてくれたり生きていく力を与えてくれます。外界との接点を断たれた時を逆手にとって自分を掘り下げているのも可能かもしれません。
今回あなたに読んでもらいたいと思っているのはこんな本です。
フランス文学者である渡辺一夫はこの本に収められている文章の中で戦争や不寛容のおぞましさについて考えています。この考えは今の時代にこそ大切なことだと思っていたら、このコロナ禍。
人間の持っている知恵や精神を力と信じて、いまこの世界を覆っている変な感じを払い除けて変えていくこと、そんなことへのヒントをたくさんくれる本だと考えます。
この本に収録されている大江健三郎の「架空聴講記」もおもしろい。
「寛容について」 渡辺一夫 著
筑摩書房 筑摩叢書 187